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地方のデマンド交通 実証試験 観光客もOK 実現性はあるのか? 三陸沿岸 No.592-A

今月、4月配布の各種広報誌の中にあった「〇〇地域デマンド交通 ご利用ガイド」と「停留所の位置図」。

それぞれ、A3(*A4の倍の大きさ)の紙を二つ折りにしてあり、両面印刷です。

別の「市震災復興・企画部 交通政策課」発行のA4の紙によれば、低調だった昨年10月からに引き続き”実証運行(実証試験)第2段”を4月から来年3月まで行うようです。

 

 

中身は、

・運行エリアは〇〇地域(*旧町)で3つ

*北部県境から中心部まで約8㎞

*半島先端から中心部まで約6㎞

*西部から約4㎞

・停留所は85か所(*昨年に比べだいぶ増えました)

・運行本数は1日3~4便(*一部は土曜運休でそれぞれ1日2~3便になる)

休みは日祝、お盆、年末年始

・電話予約は前日から1便のみ前日17時まで、その他は始発の1時間前まで

・予約後、事業者がルートを作成し到着時刻を連絡

・運賃は降車時に現金で支払い

・運賃表では中心部まで300円~900円(複数人割引で200円~600円)とバスより高くタクシーより安い

障害者と小児1歳以上12歳未満で半額

・利用登録なしで観光客も利用できる

 

 

気合いが伝わってくるような内容です。

 

旧町は人口が現在約5300人、毎月じりじりと減り続けています。

主な施設は、

・支所1か所(*旧町役場)

・郵便局2か所、簡易郵便局1か所

・交番1か所

・小中学校1か所ずつ(*スクールバス2系統)

・スーパーなし

・ドラックストアなし

・ホームセンター(小規模)1か所

コンビニエンスストア2か所

・ガソリンスタンド1か所(えらく高いので入れたことがない)

・開業医2か所

 

健康診断や文化行事等で中心部への需要は少なからずあるかもしれませんが、個人商店を中心に廃業が進み、旧町内で生活を完結するのは事実上難しくなっています。

そのため買い物や通学・通院には合併した市(*人口57000人・二つの町と合併)の中心部へ行く必要がありますが、〇〇地域デマンド交通は市の中心部までは行きません(*昨年10月からの第一弾では行っていましたが結果は散々だったようです・・)。

 

現行の市の中心部への民間バスは2系統、それぞれ日に2~3本、5~6本でよく空気を運ぶ姿を見かけます。

運賃は北部県境や半島先端から旧市内入口まででもそれぞれ590円・840円、JR駅近くまで650円・890円ですが、これでも〇〇地域デマンド交通よりは割安です。

旧市内方面向けに〇〇地域デマンド交通2ルート2便~3便(土曜日1便)が現行のバスへの乗り継ぎができるとうたっていますが、手間と運賃を考えるとどうでしょう。

 

それに対して、隣県から北部県境を通り、一部三陸自動車道を経由して旧市内に入りJR駅に至るBRTバス早朝から深夜までほぼ毎時運行されています。

所要時間と運賃は北部県境から旧市内まで15分・240円、JR駅まで22分・240円最低限の本数・速達性もあり鉄道に準ずる運賃も魅力です(JR東日本が大都市の黒字で赤字をカバーする構図です)。

 

〇〇地域デマンド交通は急な坂の多いリアス海岸で停留所も増え観光客も利用できるそうですが、さてどんな結果になるのでしょうか・・・。

 

ふと信州(長野県)安曇野(あずみの)市のデマンド交通が頭に浮かび、市のホームページと東洋経済の記事を見てみました。

 

人口96000人の安曇野市では2007年に始まり課題を少しずつ克服しながら現在は、

「AIオンデマンド交通」が運行されています。

 

西鉄三菱商事が全国13か所で運営するサービスを利用、将来の共同運行をにらみ近隣の松本市塩尻市と歩調を合わせたようです。

 

内容は、

・運行エリアは合併した4つ(*中心の周りに3つ)を、ミニバン・ハイエースグランドキャビンやキャラバン16台で

・4つの面積、東西10㎞・南北12㎞から中心部まで

・特定の運行ルートやダイヤ(時刻表)はなく、原則自宅から目的地まで送迎(*車が入れない等を除く)

・休みは年末年始のみ

・予約は1週間前から3通り

*電話(土日祝、年末年始は休み)

*LINE(市役所公式アカウント)

スマートフォンアプリ「のる~と」(*旧あずみん・クレカ決済)

希望の日時(*迎車か到着)に最も近い車両が伺う

・運行時間は8~17時

・運賃は大人300円、小学生100円、回数券11枚つづりあり

・利用登録が必要

 

最も大きな課題「土日祝運行」が今月4月から始まりました。

 

「AIオンデマンド交通」の大きな特徴は、

・AIが最速ルートを設定

・予約時に送迎時間を通知

・30分前までの予約からリアルタイム予約が可能に

アプリはクレカ決済が可能に

 

予算はコミュニティバス2路線と併せて1億3千万円で、収入は2千万円。

収入は地方公共交通としては多いそうです。

少ない人口・人口減の地方公共交通は構造的にそのほとんどが赤字で、JR各社もその例外ではありません。

維持が必要な場合、どこに原資(税金)を投入するかがいっそう問われる時代になった感があります。

 

2つを比べると随分と違いがあるものですが、その地域になるべく合った”方式”で地元民も観光客も利用できるのが理想です。

 

へき地県境民(移住者)は静かに推移を見守ろうかと思います。